そのからくりは、AOLの時価総額が売上高の40倍、タイム・Wの場合はその比率が1倍であったという事実にある。

このように、実際にマーケットを支配するパワーになるという意味で、時価総額はきわめて重要な指標である。 時価総額を最大にすることを目指す経営を「企業価値最大化の経営」といっているが、グローバルなマーケットを相手にしている企業にとっては、それはISP(インターネットへの接続代行業者)の最大手で、2000年1月、タイム・Wと合併した。
AOLの狙いは、①CATVインフラを持てること、2Wが映画の分野で蓄積してきたコンテンツを確保できること、③WがCNNのような放送ネットワークを持っていること、にあるといわれている。 など物理的資産でははるかに大きいし、従業員数にしてもAOLの比ではなかった。
しかし、時価総額ではAOLの方が高かったために、お互いの株式を交換すると、AOLのほうがマジョリティを占めることになったのである。 要するに、時価総額を高い水準に維持しておくことは、自社の将来性をマーケットに認めてもらうことと同義であり、そうしておかないと、将来、どこかの企業に買収されてしまうおそれがあることになる。
日本でも、SBの時価総額は10兆円を超え、理論的には株式交換によってS日鐵のような巨大企業を買収することも不可能ではなくなった。 あるいは、同社はすでに300社近くの企業に投資していて、その公開株はいずれも高い株価なので、投資資金を捻出する場合、銀行からいちいち借金しなくても、たとえばYの株をほんのわずか売却するだけで調達できる。
戦後、アメリカの消費者運動の高まり、企業批判に応えて、PR(パブリック・リレーション)が盛んになった。 その後、企業にとっても、もう1つの大切なスポンサーである株主(投資家)に対しても、積極的に情報開示をすべきとの気運から、IRが注目されている。
よく「小さな企業が大きな企業を呑み込む」といわれるが、それは売上高、資本金、従業員数が小さくても、時価総額が圧倒的に大きい場合は、そういう事態が起こりうるということだ。 AOLとタイム・Wの合併は、このことが架空の話ではないことを世界に知らしめた。
日本ではこれまで、株式市場をあまり重視していなかったので、時価総額というコンセプトを理解できず、またそれが企業パワーそのものになりうるということもわからなかった。 時価総額がきわめて重要なパワーであるという認識が高まるにつれて、日本企業でも最近インベスターズ・リレーション(IR)活動が、盛んになってきた。

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